日本最古の医学書 『医心方』 (2)
2011-01-25


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処で, 『医心方』 ないしは, 古典医学研究と言うと, 槙 佐知子さんを抜きには語れない.

一主婦に過ぎなかった槙さんが, この難解とも言われる 『医心方』 全 30 巻を完訳したのである!!.

この書は医学書でありながら, 引用文献は, 宋以前の医書, 仙書, 史書, 思想, 哲学, 文学, 博物学, 易学, 辞書類など 200 以上に上り, 中には一書で 100 巻, 50 巻のものもあり, 既に中国では失われている文献もあるという.

内容は内科, 外科, 産婦人科, 小児科, 精神科, 泌尿器・肛門科, 養生ほか, 現代医学にはない錬金術, 呪術, 占い, 妖怪変化対策などからなっている. (槇 佐知子 著 『古代医学のこころ』 NHK 出版を参照)

さて, 『医心方』 で最も人口に膾炙しているのは, 巻第 28 「房内」 (一般には 「房中術」 という) であろう.

その説は, 中国古代思想の核心とされる 『陰陽五行論』 に基づくものである.

「房内」 は第 1 章から 30 章まであり, 12, 13, 16, 17 章は交接体位が図解で示されている.

「至理第 1」 (第 1 章の 「至理 (シリ)」 とは原理の意) は, 「房中術」 とはどういうものかを説く.

房中に耽ってインポテンツ気味のノイローゼに陥った黄帝 (中国伝説上の帝王) が, その道の大家とされる素女 (仙女?) に相談することから話は始まる.

<黄帝, 素女に問ふ, 曰く, 吾, 気衰へて和せず, 心内 (ココロ) 楽しからず, 身は常に, 恐危 (オソ) る, 将に如之何 (イカン) せんとす. 素女曰く, 凡そ人の衰微 (オトロ) ふる所以は, 皆, 陰陽交接 (マジワリ) の道を傷 ((ソコナ) ふのみ. 夫れ女の男に勝るは, 猶ほ水火を滅すがごとし. 之れを知りて行へば, 釜鼎 (カマ) の能く五味を和して以て羹〓 (アツモノ) を成 (ツク) るが如し. 能く陰陽の道を知る者は五楽を成し, 之れを知らざる者は, 自命 (イノチ), 将夭 (ミジカ) し. 何ぞ歓楽を得んや, 慎まざるべけん .>

黄帝の相談をうけた素女は, 房中術の入門手引きはしたものの, 具体的には仙人仲間の彭祖 (ホウソ = 伝説上の人物で 700 余歳まで生きたとされる) に聞けという.

彭祖の答を要約すると "多接" "少泄" "易女 (その道に易ある女子と接す)" "御少女 (年若い女子と接す)" (女性の場合は年若い男子と接す) の 4 点である.

ここに貝原 益軒の 「接して漏らさず」 という 『養生訓』 の片鱗がみられるのである.

「至理第 1」 は以下の如く締められている.

<...故に年卅 (サンジュウ) に至らば, 須らく房中の術なる者を識るべし. 其の道は極めて近きも, 人の能く行ふもの莫し. 其の法は, 一夜に十女を御して泄 (モラ) さざるのみ. 此に房中の術畢 (オワ) んぬ. 薬餌 (クスリ) を兼ねて, 四時絶つこと勿ければ, 則ち気力百倍して, 智慧日に新なり. 然るに此方の術や.>

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