核のごみ
2025-06-22


過日, 日経に載った記事である (以下, 引用)

核のごみ 「呼び水」 効果空振り, 手挙げ式の見直しを! (編集委員 矢野寿彦)

「呼び水」効果は期待外れだった.

原発から出る高レベル放射性廃棄物, 所謂「核のごみ」の最終処分地の選定作業が足踏みしている. 第 1 段階の文献調査を受け入れた自治体, そして専門家からも今のままでは問題が多いと, 見直しを求める声が強まる.

総合資源エネルギー調査会の電力・ガス事業分科会の更に下にある特定放射性廃棄物小委員会. 経済産業省のサイトから入るとなかなか見付け辛いこの審議会において, 4 月 25 日, 委員の一人, 東京電機大の寿楽 浩太教授は問題提起した.

「(処分地を選ぶ) プロセスは見直す局面に来ていると思う」

この日の審議は選定の進捗状況について当局が説明する場でしかなかった為, 大きな議論に発展しなかった. 何故思い切った発言に踏み込んだのか. 5 月上旬, 寿楽教授を訪ねた.

核のごみは地下 300 メートルヨの深い岩盤に埋設する. 処分地選定のプロセスは 3 段階からなる. この 5 年間で文献調査をクリアしたのが北海道の寿都町, 神恵内村. そして原発のある佐賀県玄海町が 1 年前に名乗りを上げた.

こうした小さな町村の「英断」が呼び水となり 10 前後の自治体が手を挙げると国は踏んでいたが 4 例目が現れない. 長崎県対馬市や島根県益田市などが浮上したが, 表面化すると反発の声が広がり矛を収めた.

「そもそもの前提が崩れてしまった」. 寿楽教授の見解だ. 「選定の目的は十分に適した場所を 1 カ所見付ける事. 多くの候補地を相対評価し, 文献から概要, 精密へと調査を進め, 絞り込む. このコンセプトから乖離した」

北海道は 4 月半ば, 処分地探しの実務を担う原子力発電環境整備機構 (NUMO) が募集したパブリックコメントに対して「文献調査地点の広がりが見られず, 結果として北海道だけの問題になっている」と苦言を呈した.

当然の懸念だ.

処分地選びについて 2015 年, 国が前面に出ると方針転換した. 処が, 17 年に公表した「科学的特性マップ」は地質学的な知見だけで適地を探すのが困難な日本での地層処分の難しさを浮き彫りにした.

そこで採られたのが「手挙げ式」, 結局, 地元の発意に頼って受け入れ先を探すと言う原子力政策に馴染みの「立地問題」と化した. これでは如何しても社会の関心は薄れ, 国民的な議論は巻き起こらない.

科学的マップでは日本列島の約 3 割を輸送の面も勘案して「適地」に色分けした. 半世紀, 原発の経済的恩恵を受けて来た首都圏や関西圏の陸地も含まれる.

ならば発想を転換し, 先ずこの適地のある都道府県知事に, 核のごみに協力する覚悟を国が責任をもって問う事から始める「トップダウン式」は如何だろう.

青森県六ケ所村の貯蔵施設には英仏から返還されたガラス固化体 (高 レベル放射性廃棄物) 1830 本が一時保管されている. 4 月 26 日, 最初の 28 本が搬入されてから丸 30 年経った.

保管開始後, 30 - 50 年で搬出すると言うのが地元との約束だ. 残り 20 年を切った. (引用終り)

思うに, 「北朝鮮による拉致問題」 も 「核のごみ問題」 もその本質においては同じである.

政府は, 内閣が替る度に 「拉致問題は "最優先課題"」 とお題目を唱える. が, それは各内閣の 「申し送り事項」 になっているらしい.

「核のごみ」 処分地 問題も同じ. "どうせ自分が担当している間に決着を迫られる事案ではない" と安心 (?) しているのであろう.

この様な問題は, 「国の借金問題」 にも顕われている.

今回の都議選に続く, 参議院選を控え, やれ "減税" だ "給付金" だと得票目当ての施策が挙がっている.

中国の共産党は 50 年, 100 年先を見据えて国家戦略を研ぎ澄ましているとされるが, わが国も少しは見習って欲しいものである.


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